廃業と清算の流れ
廃業を判断したら、それに伴う『解散の登記』と『清算人の就任登記』をします。
廃業を決断したからといって会社がすぐさま無くなるわけではありません。
たとえ撤退を決めて事業をストップしたとしても、その時点では残務処理や資産、さらには負債が残っているでしょう。
それらをすべて処理できてこそ、ようやく会社を消滅させることができます。
そんな会社を空っぽにする作業を『清算』と呼び、清算が終わった状態を『清算結了』と言います。
- 会社の解散=営業を停止し資産や負債の処理(清算)に入ること
- 清算人=清算を取り仕切る者。通常営業時の代表取締役に代わる存在
- 清算結了=清算作業がすべて終わって会社の中味が空っぽになった状態
会社を解散して清算に入ると?
廃業を決断した会社は清算会社となり、通常の営業活動はできなくなります。
清算に伴う会社財産の処理等を活動の制限範囲としてのみ、会社は存続することになるのです。
清算を開始したら、財産の処分を行って換価します。
また換価して作った金銭で負債や税金の残りを支払います。
それでも残った分があれば、株主が株式の保有割合によって引き受けます。
こうして、資産も負債もゼロになって、会社を消滅させることができます。
廃業・清算手順まとめ
➢廃業の決断
株主総会の特別決議(3分の2以上の賛成)による解散決議です
↓
➢残業務の処理
営業流量日まで業務をこなします
↓
➢清算人・代表清算人の選任・登記
清算人就任と解散の登記をします
社長と清算人は同一人物でもかまいません
↓
➢解散等の通知・公告
官報で解散の旨ならびに異議があれば申し出ることを通知
公告期間は2カ月以上です
↓
➢解散確定申告
解散後2カ月以内に確定申告をおこなう必要があります
↓
➢資産の換価処分
保有している資産を換価します
↓
➢負債の返済
資産を処分してできた金銭等を使って負債の支払いをします
↓
➢株主への資産分配
負債を返済しても金銭が残る場合は、株主に分配します
↓
➢決算報告承認総会の招集・開催
株主総会で清算の終了を承認します
↓
➢清算策定申告
清算事務の決算承認後の確定申告を行う
↓
➢清算結了登記
法務局へ清算終了の登記を申請
↓
➢税務署等へ廃業届
会社解散や清算に関する論点
清算が終わず借金が残るとどうなる!?
上記は清算の原則パターンですが、この通りに進まない場合があります。
それは資産よりも借金をはじめとする負債の方が多い場合です。
会社を消滅させるためには、資産も負債もゼロにしなければならないと述べました。
もし負債の方が多かったらどうでしょうか。
資産を換価して現金を作り、それを負債の支払いに回したとしても負債が残ってしまう場合です。
この場合は普通のかたちで清算をすることができなくなります。
(詳しくは『廃業すると借金等の債務が残ってしまう場合』の記事に譲ります)
ここでは「資産も負債もゼロにしないと会社を消滅させられない」ことを押さえておいてください。
いつ、誰から廃業を伝えるか?
廃業を決定したとして「いつ関係者に言うか?」を現場では悩むケースが多いようです。
お客さん、仕入先、従業員・・・と。
この問題は、各社が置かれているケースごとで答えを出すしかないように思います。
早めに伝えてあげれば、先方が準備をする時間が作りやすくなります。
かといって、早く伝えすぎると混乱が長引いて収拾がつかなくなる恐れもあったり、と。
また、従業員やお客さんなど、「どの順番で伝えていくか」も悩ましいところです。
内部で頑張っていたスタッフが、外部の人間から聞いてはじめて自社の廃業を知った場面などは、なんともやるせない気分になります。
正解はありませんが、廃業の影響が大きい順に声をかけるのがいいような気がします。
従業員、仕入先、お客さん、銀行・・・の順番でしょうか。
結果的に内側の人間から知らせることになります。
なお、必ずしも廃業を決定し、解散の登記をしてから公言しなければいけないわけではありません。
廃業・清算決了の手続きをしないと?
「会社をはじめるのは簡単だけど、畳むのは大変だ」
廃業の現場でよく聞かれる感想です。
見ていただいたように手続きは多く時間もかかります。
急いでも2カ月以上の期間を要するでしょう。
しかも、「解散&清算人の就任」と「清算結了」という2回の登記をするし、税務申告も必要です。
専門家に外注すればそれなりに費用もかかります。
ここで疑問が沸くかもしれません。
「会社を止めるのにそんな時間とお金がかかるの?」と。
そして「ちゃんとまっとうに手続をしなければならないの?」と。
確かにそうなんですよね。
もう営業してないんだから、適当にほったらかしておこう・・・と。
分からないでもありません。
このような場合に、あまりキレイな終わり方ではありませんが、途中までで会社が放置されているケースもあるようです。
この場合の注意点は、法人としては存在し続けることになるので、原則、毎年の住民税がかかってしまいます。
ただ、休眠の届を提出することで、納税義務が免除してもらえる場合もあります。
関係する自治体に確認し、必要あれば忘れずに出しましょう。
公官庁などへの届け出先
法律関係
・解散や清算結了の登記(法務局)
許認可
・廃業の届出(監督官庁)
税務
・解散の届出(税務署、県税事務所、市町村)
・清算結了の届出(税務署、県税事務所、市町村)
・給与支払い事務所の廃止届出(税務署)
・消費税事業廃止届(税務署)
雇用保険
・雇用保険適用事業所廃止届(ハローワーク)
・雇用保険被保険者資格喪失届(ハローワーク)
・離職証明書(ハローワーク)
社会保険
・健康保険・厚生年金被保険者喪失届(年金事務所)
・適用事業所全喪失届(年金事務所)
・健康保険任意継続被保険者資格取得申出書
(被保険者の住所地の協会けんぽなど)
労働保険
・労働保険確定保険料申告書(労働基準監督署)
・労働保険料還付請求書(労働基準監督署)
業界団体
・退会の申出(商工会議所や各加入団体等)
廃業・清算のお手伝いについて
廃業や清算は、手続が大量になり、とても面倒な作業となります。
また、いかにうまく立ち回るかで、残せるお金の額や廃業処理にかかる費用、税金などが大きく変わってきます。
司令塔を求めるならば、ぜひお気軽にご相談ください。
事業継続の可否の判断や関係者への情報開示のやり方、上手な清算業務の方法、個人資産やその後の相続などまでご相談いただけます。
お問合せは、こちらのフォームから可能です。
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