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荒れる事業承継準備委員会を仕切る

あまたの不満や不安が出るわ、出るわで大変です。

これには、社長もビックリです。

継手の会社と継がれる会社のコアメンバーによる顔合わせの機会でした。

後継者は娘の『法人』

こちらの支援先は、関東のとある会社(A社とします)。

社歴45年の会社を娘さんが継ぐという背景です。

ただ他と比べて変わっているのは、社内承継なんだけど実質的に法人で引き継ぐということです。

社長の娘さんは、取締役としてA社にずっと名を連ねていました。

しかし、別の法人の理事長をした関係もあり、A社の仕事はほとんどしていません。

そんな娘さんへの承継がきまり、この度正式に後継者となりました。

肩書としては代表取締役になるものの、A社の仕事に100%集中することはできません。

別法人の理事長の也割がありますから。

そこで今回は、別法人の幹部と共同でA社の経営をしていくことになったのです。

娘への承継ではあるものの、別法人の傘下に入るというM&A的なニュアンスが含まれる事業承継となりました。

私はA社の社長たちと事前の打ち合わせで、正式な社長交代を前に、社内で事業承継委員会を立ち上げることを提案しました。

A社と先方の別法人のコアメンバーが顔を合わせ、スムーズな経営統合のための話し合いを行おうという意図です。

先代も、後継者の娘さんも同意してくださり、先日第一回目の話し合いがもたれました。

不満と不安があふれ出た!

会では、私が司会進行役を務めます。

今回の会合開催の経緯や、準備委員会活動の意義を簡単に伝えました。

次に社長よりご挨拶をいただき、正式に事業承継の準備を進めていくことを宣言しました。

その後、参加メンバ―各自の自己紹介です。

堅苦しくならないように、アイスブレイク的な要素も加えて自分を語っていただきました。

お互いへの質疑応答の機会もありました。

これが大いに荒れることになったのです。

「ウチの会社が吸収されることに不安と不満があります」

「かつての取引で弊社はそちらからむげに扱われたことがあるため、正直、今回の話は前向きに考えられません」

A社サイドから、こんなネガティブな発言が噴出してきたのです。

当初社長は、「ウチのスタッフ達に問題ないよ。娘の法人のグループに入ると言えば『ハイ分かりました』と言うでしょう」と高をくくっていました。

ところが、です。

社長は甘く見ていました。

やはり、人は変化というものに対して、過剰に悪く捉える傾向があるということです。

そもそもトップの人事ということは、トップ本人が思っている以上に社内へのインパクトがあるものです。

物事が動く場面は、これまで溜まっていた怒りや不満が噴出しやすい機会となります。

継がれる側にいる人間の気持ちの微妙さを、トップも継ぐ側も注意しておかなければなりませんね。

ところが、継ぐ側となる別法人の幹部メンバーは、そのあたりの機微が読めません。

お互いのことをまだよく知らない状況なのに、無理に話を進めようとします。

また「どんなシステムを使っているか」等の細かいところにフォーカスしようとします。

よく言えばまじめで、悪く言えばせっかちで、融通が利きません。

腹を割って本音を

こんな状況で、奥村は「初回はとことん本音を吐き出してもらう機会にしよう」と肚を決めました。

準備していた予定は大幅に変更です。

全員に今抱えている恐れや不安を語ってもらいました。

A社のメンバーが不安や不満を語れば、別法人の幹部からは

「こんなに抵抗感があるとは意外でおどろいた」

「この先うまく一緒にやれるのか心配になってきた」

という声も出ました。

初回の顔合わせは、和やかな雰囲気とはとても言えないものでした。

でも、考えようによっては、このタイミングで本音が出るということは良いことです。

わだかまりを溜めたまま事が進み、後で大爆発というのは最悪なパターンとなります。

大きな成果と言ってもいいでしょう。

言いたいことを言ったあとは、「双方が仲良くなるためのアイデアは?」をお題にアイデア出し(ブレインストーミング)を企画しました。

人はアイデアを考えることで、気持ちが前向きになります。

また、一緒の方向を見て活動したことで他のメンバーと親近感が沸きます。

どんなアイデアが出たかではなく、アイデアを出す作業自体に意味があると考えたわけです。

後継者の娘さんの涙

そんなこんなで初回の会議を終えました。

後継者となる娘さんからの締めの言葉の際、彼女は涙を流しました。

自分が社長としてA社から受け入れてもらえるか不安だったのでしょう。

実際に会議の場では厳しい声も聞かれました。

でも最後には、みんなが和やか顔をして「いっしょに次へ進もう」という雰囲気が醸し出されました。

「それでホッとして思わず涙が・・・」と次期社長は照れ笑いをされていました。

娘さんの涙のおかげで、場の一体感がより強まったことも否めません。

「正直、今日はコンサルタントの先生が来ると聞いていたので嫌な気分でした。コンサルタントにはいい印象がなくて・・・。でも奥村先生は良い人でよかったです」

こんなことを終了後にA社のメンバーの一人から言われました。

他のコンサルタントの仕事ぶりはなかなか知る機会がないのですが、第三者を通じてたまにこんな声を聞きますね。


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この記事を書いた人

奥村 聡(おくむら さとし)
事業承継デザイナー
これまで関わった会社は1000社以上。廃業、承継、売却・・・と、中小企業の社長に「おわらせ方」を指導してきました。NHKスペシャル大廃業時代で「会社のおくりびと」として取り上げられた神戸に住むコンサルタントです。
最新著書『社長、会社を継がせますか?廃業しますか?』
ゴールを見すえる社長のための会【着地戦略会】主宰

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