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M&A、悩ましい株式譲渡と退職金の関係性・・・

とあるお客様の会社を、M&Aで他社に売却するために動いております。。

ここまでビックリくるくらい順調かつ、すごいペースで進んできました。


基本合意を結び、これから実施されるデューデリと呼ばれる調査・精査前のミーティングを実施のための打ち合わせが開催されました。。

売り手と、買い手が会議室に顔をそろえています。


「社長の退職金は後日でお願いします。1年後あたりを考えています」

買い手企業より、想定外の話が出てきました!!




今回の件でも、私たちM&Aアドバイザー陣は、「社長の退職金というものは、株式の譲渡対価とほぼ同じ意味だ」と捉えています。

それゆえ、それぞれが別に切り離されることとなる今回の提案には、大変頭を悩まされることになりました。



本件では、社長が持っている会社の株式を買い手が買うことでM&Aを実施する予定です。

いわゆる「株式譲渡」という手法です。


株式譲渡においては、売却時の株価が、株式の取得時より高くなると、利益が発生することになります。

税金も発生します。

できる限り税金を払わず、手元にお金を残したいというところが当事者の本音です。

そこで株式譲渡と一緒に、「退職金」も利用します。

退職金の支払いに対しては、一般的に税金が低く抑えられるからです。


まず社長が退職金を取る

↓↓

すると、会社の財務内容が悪くなるので株価が下がる

↓↓

安くなった株式を買い手に売る


こうして節税を図るのです。


超単純化してみましょう。

たとえば、本来の株式が3億円の価値だったとします。

もし社長が退職金1億円を会社から取れれば、その分会社の資産が減るため、株価は2億円まで下がるというイメージですです。


退職金が増えることで、株式譲渡対価は減ります。

結果、節税になります。


株式譲渡額と社長の退職金はシーソーのようなもので、どちらかが増えれば、どちらかが減るという関係性です。

売り手である社長が手に入れる利益を、どちらにいくら振り分けるか、という話だということです。

「株式譲渡と退職金は、原則切り離せない一体化したもの」という意味もお分かりいただけるでしょうか。




ところが、それを別々の話にしてほしいという話が、買い手から出てきました。


買い手の主張はこんなところです。

「株式は監査終了次第すぐに買い取ります」

「しかし、現社長には1年間『社長として』会社に残っていただき、引継ぎをしながら約1年後に社長を交代しましょう」

「社長交代のときに予定通りの退職金を支払います」


これはこれで筋が通った話だと感じました。


多くのケースでは、M&Aが成立した時点で社長も変わります。

だから売り手の社長は、株式売買と退職金の受け取りが同時にできます。


しかし本件では、今の社長が社長でいる期間が1年近く先にしてほしいそうです。

その主たる理由は、次の社長となる予定の方が「買い手の会社内での身辺整理をきっちり済ませてから、M&Aで購入した会社の社長に就かせてもらいたい」ということです。

M&Aの対象会社の経営をはじめるにおいて、中途半端なことはしたくない、と。

そのために1年くらいの猶予が欲しいとうことでした。


M&A業務をやっていると、先代の社長は「株式を手放すと同時に社長も交代する」ということが当たり前のように感じていました。

しかし、現場の仕事に主眼を置けば、買い手さんの言い分のほうが、むしろまっとうなのかもしれません。




さて困りました。

買い手の言い分は正当です。


しかし、社長の退職金が払われるまでは、本当の意味でのM&Aは終わりません。

そして、どんなに契約や保証で縛ったところで、やっぱりお金を現実に手にできるまでは不安です。


退職金を社長が手にできない可能性は、0.1%くらいかもしれません。

しかし、・・・です。

億を超える大きなお金の話ですから、なおさら慎重になります。


買い手は「過去の買収案件では、すべてこのかたちでやってもらっています」と言います。

売り手の社長も人がいいので「それでもいいですよ」みたいな雰囲気です。

しかし、私は釈然としません。

普通のM&A業者の人間だったら、ここを問題視しなかったり、感づいても買い手の言い分を優先したりするかもしれません。

そのほうが、話がすぐにまとまるためです。


正直なところ、会社の規模等からする各は買い手のほうが上です。

さらにM&A交渉は、これくらいの段階になると買い手のほうが優位になってくるものです。




売り手側は、どの程度抵抗すべきか。

どのあたりを落としどころとして想定するか・・・


退職金の支払いに対して、買い手会社や買い手の代表者の連帯保証をもらう。

税金を多く払うことになってもいいから、退職金はもらわず、全額を株式売買分としてもらう。

誰か別の人間をワンポイントの社長にしてもらい、現社長が退職金をもらえるようにする。

信託とか供託のような感じで、どこかに退職金分のお金を隔離して保全しておく。。。



いろいろ手は考えられますが、買い手が受け入れてくれるかは別の話。

これまで良い雰囲気で話が進んできたので、強く主張すると、売り手と買い手の関係性に影を落としかねない点も気になります。

うーん、難しい・・・

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この記事を書いた人

奥村 聡(おくむら さとし)
事業承継デザイナー
これまで関わった会社は850社以上。廃業、承継、売却・・・と、中小企業の社長に「おわらせ方」を指導してきました。NHKスペシャル大廃業時代で「会社のおくりびと」として取り上げられたコンサルタントです。
最新著書『社長、会社を継がせますか?廃業しますか?』

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奥村はメールマガジン『社長の着地戦略会』を発行しています。
事業承継や廃業、M&A、相続対策支援から得られた気付きやヒントをお届けしています。 セミナー等のイベント開催のお知らせも。
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