奥村聡(事業承継デザイナー)
NHKスペシャルで「会社のおくりびと」として取り上げられた奥村聡が現場で培った経験を元に話します

神戸のケーキ屋『御影高杉』の廃業ニュース

 

神戸のケーキ屋『御影高杉』が閉店するというニュースが流れてきました。

地元ではかなり有名なケーキ屋さんです。

(ヤフーニュース)
『洋菓子「御影高杉」閉店へ 全3店舗、9月末までに』

 

今日、カフェでかき氷を楽しんでいたときにも、後ろのテーブルのグループがこの話をしていました。

「また仕事さぼってカフェか!」という僕への批判はさておき、結構インパクトのあるニュースだった様子です。

 

僕は、高杉の店に行ったこともなければ、ケーキを食べたこともたぶんありません。

会社の内情も全然知りません。

でも、廃業の理由が「後継者がいないため」だったこともあり、少し便乗させてもらいましょう。

 

後継者がいないから事業をやめる。

 

普通の方ならまっとうな理由に感じるかもしれません。

でも、僕みたいなスレてしまった人間は、そう素直に受け止められません。

「何か別の理由(例えば経営難とか)があって、それを後継者がいないという理由にすり替えてるだけじゃないの?」とか。

「後継者がいないとか言っちゃって、そもそも探す気すらなかったんじゃないの?」とか。

けっして御影高杉に文句を言っているわけではなくて、あくまで一般論。

この件のことは本当に何も知りません。

 

 

廃業や閉店の情報は、決定事項となって僕らの前に現れます。

「〇月〇日をもって閉店します」だったり、ときには過去形で「閉店しました」と。

それが今は、あたりまえなのでしょう。

廃業する側の事業主も、決定事項として出せるようになるまでは、廃業なんて知らない素振りを貫こうとします。

 

でも、そのあたりまえをちょっと疑って欲しいのです。

 

ちょうど『やりたいことがある人は未来食堂に来てください』という本を読んでいました。

この著者の小林せかいさんは定食屋を運営していらっしゃいます。

自主的に業績の数字を毎月公開しています。

さかのぼれば、起業を決意して会社を辞めた翌日から開業まで1年半、ブログで日々の準備等を公開していました。

開店までの道のりをオープン伝え、前に進んでいる姿を将来のお客さんに示したのです。

 

ブログで「開業します」と宣言しても、本当に開業できるかどうかは分かりません。

途中でダメになるリスクを背負うことになります。

しかし、リスクを冒さなければリターンも得られません。

小林せかいさんは、ブログで情報をオープンにした成果で、開業時にたくさんのファンを獲得していました。

 

この箇所を読んでいるときに、「後継者がいない会社も情報を公開したっていいんじゃないの?」と思いました。

廃業を決定事項として伝えるのではなく「事業承継をどうしようかな」と悩んでいることから伝えてみたり。

また、後継者さがしを行うなら、その過程まで公開してみたり。

リアルな姿やがんばる姿をオープンにすることで、応援されたり、どこかから機会が回ってくる可能性が跳ね上がると思います。

やってみた結果、失敗したっていいじゃないですか。

そのときは予定どおり廃業するだけで、それ以上のマイナスはないのです。

「隠さなければいけない」というその思い込みを、疑ってみてはどうでしょうか。

 

 

僕が関わる事業承継や廃業などの分野は、デリケートな話だとされています。

でも、あまりに腫れ物に触るように扱うのもどうかと感じています。

おかげでとっても閉鎖的な世界が出来上がってしまいました。

どうにかこれを風通し良くしたいところです。

 

会社やお店をいずれにしてもたたもうと思うなら、一度、若い人に委ねてみてはどうでしょうか。

「好きにやってみろよ」って気前よく。

彼らが失敗したって、そもそも無くなる予定だった店や会社が無くなっただけです。

しかも、先代の責任でもない。

でも、もし事業を引き継いだ者が成功させれば、「もとは俺の店だったんだぜ」っていばれます。

チャンスを次世代につないだ功績も含め、大いに鼻を高くしていただいて結構です。

 

やめることを考えている事業主がオープンに情報を出し、興味をもつ若い人がアプローチできる。

結果、事業やそれに伴う価値や想いが繋がれていく。

こんな風通しの良い世の中がいいなぁ。

この度のニュースのように、名のある店が無くなってしまうのも残念ですしね。

 

 

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プロフィール

奥村 聡(おくむら さとし)
事業承継デザイナー
これまで関わった会社は850社以上。廃業、承継、売却・・・と、中小企業の社長に「おわらせ方」を指導してきました。NHKスペシャル大廃業時代で「会社のおくりびと」として取り上げられたコンサルタントです。
最新著書『社長、会社を継がせますか?廃業しますか?
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