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社長の遺言の作り方は?

目次

社長の相続は遺言を駆使する

遺産分割でトラブルは起きがちです。

普通の人が思うよりもずっと多くの争いが
現実には起きているのでしょう。

また、相続人の中に認知症の方がいたりと、
スムーズに遺産分割協議に臨めない事情を抱えていることもあります。

 

遺産分割が無事終わらなければ、
会社運営にも大きな影響を与えてしまうかもしれません。

遺産分割のハードルを上手に超えるためにはどうしたらいいか。

それは遺産分割協議をさせないことです。

話し合いをするから仲たがいをしてしまったりするのです。

だったらそもそも、その話し合いをさせなければどうでしょうか。

遺言を使えばそれが実現できます。

 

遺言で遺産の分け方を指定してしまう

故人が遺言をのこしておけば、
その遺言で遺産の分け方を指定することができます。

「法律で相続分は決まっているのでは?」と思われる方も
いらっしゃるのかもしれません。

でも、それは本人の意志表示が無い場合のことです。

本人の「こういうふうに相続させたい」という意思がまず優先されます。

その代表的な手法が『遺言』です。

 

遺言で相続方法を指定してしまえば、
そもそも遺産分割協議(遺産分け)をさせないで済みます。

そうなれば相続による紛争の可能性を大幅に減らせます。

一般的には話し合いがこじれて紛争になるケースが多いのですから、
その話し合い自体をさせないことが一番の対策になるわけです。

 

遺言を上手に活用することで、
スムーズな相続ための道筋をつけてあげてください。

遺言は遺産分割のトラブルを回避するだけでなく、
大変な相続手続き(例えば資産の名義変更)なども楽にしてくれます。

 

 

社長の(公正証書)遺言作成のポイントは?

「ならば遺言を書こう」と思っていただいた方、
もうちょっとお話を聞いてください。

遺言はただ書けばいいというわけではありません。

せっかく作成された遺言の中には、
内容の不備で使えないものもあったりします。

また、書き方が悪いために、返ってトラブルを招くようなものも・・・

効果的に遺言を残すポイントは何でしょうか。

 

できるだけ公正証書で

遺言には主に公正証書で作るものと自筆で作るものがあります。

自筆遺言はしっかりと形式を整えなければ無効になってしまいます。

そういう意味では、公証人が立ち会って作成される
公正証書遺言のほうが間違いないありません。

 

自筆遺言の場合は、
相続発生時に家庭裁判所で遺言書の検認が必要になってしまいます。

相続人が集まり、その面前で遺言書が開封される
セレモニーとでも思っていただければイメージしやすいかもしれません。

公正証書遺言の場合は、
この遺言書の検認の手間がかからないこともメリットです。

 

一方、公正証書で作ると費用がかかるというデメリットがあります。

公証人の手数料が発生するためです。

相続財産の金額が増えたり、
相続のさせ方によって費用が加算されていきます。

費用のことを考えると、まだお若い社長さん等ならば、
まず自筆遺言を書いてみてみるのもいいかもしれません。

 

財産の特定に注意をする

「A町〇番の土地と建物を妻に相続させる」

遺言書にこんな感じで書かれいたとします。

すると、土地だけ登記の名義変更ができて、
建物はできません。

これが使えない遺言の典型例です。

 

まず、遺産は「特定できるように書かなければならない」
という大前提があります。

たとえば「昨年買った、赤くて丸いアレ」
と書かれていても何かわかりませんよね。

ちゃんと遺言で言っていることが、
どの遺産のことなのかわかるように書かなければいけません。

 

各財産には「ここまで書かないと特定されない」というラインがあります。

それが、土地の場合は地番であり、建物の場合は家屋番号です。

使えない遺言の例では、建物の家屋番号が書かれていません。

ゆえに、土地だけ登記できて、
建物はできないことになってしまうのです。

 

こんなミスを起こさぬよう、
財産の特定には注意して書いてください。

公正証書遺言ならば、このあたりの単純なミスは防げます。

 

財産は個別に単独で相続させる

ひとつの財産を一人の相続人に承継させることを原則にしましょう。

良くない書き方のひとつが、割合の指定です。

「全財産の3分の2を長男、3分の1を次男」
といった書き方ですね。

これでは、その割合を実現するための話し合いが必要になってしまいます。

「お前が自宅を相続したら、3分の1を超えるじゃないか」のように。

遺言を書いておくことの大きなメリットのひとつが
「遺産分割の話し合いをさせないで済むこと」でした。

話し合いが必要となるこのような書き方はオススメできません。

 

一つの財産を複数人で共有させるのもよくありません。

例えば「子供二人で自宅を共有にさせる」ような場合です。

長い目で見たら、永遠に共有のままというわけにいかないもの。

将来に面倒なことが起きる可能性が非常に高まります。

 

 

株式を後継者に集める

株式が後継者に集まるような遺言の書き方をしましょう。」

これは社長の相続ならではの論点になります。

将来的なトラブルの可能性をへらすならば、
株式は分散させるべきではありません。

 

「株をみんなで持たせて次期社長にプレッシャーをかけよう」と
考える方がいらっしゃるかもしれません。

理想的に運営できればいいのですが、
私の感覚ではこの手の方策は機能しないことが多いと思っています。

むしろ後継者の足を引っ張る結果になってしまったり・・・と。

 

また、税金を減らすために株式を分配するケースもありますが、
やはりトラブルを招きやすくなります。

「議決権制限などの種類株式を利用すればいい」
という意見もあるでしょうが、所詮小細工です。

この辺りは個別の案件ごとになりますが
「株式は後継者がすべて持つ」を原則に置くべきでしょう。

 

遺留分も考える

民法では、最低限、相続人が主張できる権利として
『遺留分』というものが定められています。

本来、遺産をどのように相続させようが、
それは本人の自由です。

しかし、たとえば兄弟が二人いて、
遺言で「兄に全財産を相続させる」となっていたら、
弟がかわいそうです。

そこで民法は遺留分という概念で救済措置を用意しています。

先の例なら、弟は遺留分を主張して、
一部の財産を手渡すことを兄に要求できるのです。

だから「遺留分につけましょう」と、
法律家をはじめとする専門家からよく警告がなされます。

できるだけ遺留分を害さないような、
遺言の書き方を心掛けておきたいところです。

 

ただ、これは一般論。

状況によっては、遺留分を侵害する書き方になってしまうのも
仕方ないと思っています。

例えば、遺産の中の大半の価値を、
自社の株式が占めていたらどうでしょうか。

遺留分を気にして、株式を会社経営に関与していない相続人にまで
相続させるのが良いとは思えません。

後継者に株式を承継するため、
他者の遺留分を冒すのは仕方ないと思うのです。

 

むしろ大切なのは、
状況の難しさや必要性を相続人になる者たちにあらかじめ伝えておき、
理解を得ておくことではないでしょうか。

遺留分を主張するか否かは、その者次第なのですから。

法律論にばかり目が行くと失敗しがちです。

 

遺言執行者を立てる

亡き本人に代わり遺言の内容を実現する人間を
『遺言執行者』と言います。

遺言執行者を選ぶ義務があるわけではありませんが、
できれば遺言で決めておいた方がいいでしょう。

弁護士や司法書士などの専門家を選任することもできます。

安心できる相手に依頼することで、
確実に遺言の効力を発揮させられるようになります。

 

法律や税の専門家の助言をもらう

生兵法は大怪我の基という言葉があるとおり、
一度は専門家のアドバイスを聞いてみることをおすすめします。

失敗したときのことの大きさを思えば
コストよりも価値があると思います。

ご本人には見えていない法律や手続上の問題が、
場数を踏んだ専門家には見えているときがあります。

また、法律的にはそれで良くても、
税金面で地雷がある場合だってあります。

後々になって、想定外の税金を納めることになった・・・と。

 

 

こんな時は必ず遺言を作りましょう

必ず遺言を残していただきたいケースがあります。

しかし、そもそも事業をなさっている方には
遺言が必須と考えるべきでもあります。

 

●兄弟姉妹が相続人になる場合

相続人が配偶者と故人の兄弟等の場合です。

この時は遺言がないと配偶者に
大変苦しい思いをさせてしまう可能性が高いです。

 

●配偶者以外の者との間に子供がいる場合(婚外子)

●前妻や後妻に子供がいる場合

これらの場合も遺産分割の協議が紛糾しがちです。

遺言で予防をしましょう。

 

●資産の種類や量が多い場合

遺言があれば名義変更等の手続きがかなり楽になります。

遺言を利用する隠れたメリットでしょう。

 

●後継者が血縁のない第三者である場合

会社の後継者が従業員や経営幹部などで社長と血縁がない場合、
遺言で保険をかけておいていただきたいところです。

もし何かの事故などで社長が亡くなってしまうと、
その株式は相続財産となり、
後継者の手に渡らない可能性が出てきます。

どうにか株を後継者が手に入れることができたとしても、
そこまでには相当な苦労を要したはずです。

遺言を使い「株式は〇〇(後継者)に遺贈する」
という文言を残しておくだけで、
トラブルは回避できます。

 

まずは遺言を書いてみる

こんなところで「社長のための(公正証書)遺言作成」
のテーマは終わりにします。

まずは、遺言を書いてみていただきたいと思います。

それが自筆遺言でもかまいません。

遺言は何度でも書き直せます。

遺言を書いたら、
お金を自由に使ったり、
不動産を処分できなくなるなんてこともありません。

肩の力を抜いて「まずは一回書いてみる」ぐらいのスタンスで
ちょうどいいのかもしれません。

 

→ 社長の相続対策・遺言作成支援

 

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この記事を書いた人

奥村 聡(おくむら さとし)
事業承継デザイナー
これまで関わった会社は1000社以上。廃業、承継、売却・・・と、中小企業の社長に「おわらせ方」を指導してきました。NHKスペシャル大廃業時代で「会社のおくりびと」として取り上げられた神戸に住むコンサルタントです。
最新著書『社長、会社を継がせますか?廃業しますか?』
ゴールを見すえる社長のための会【着地戦略会】主宰

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