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事業承継コンサルティングの依頼をお断りした件

最近ご相談を受けていた会社の事業承継コンサルティングですが、最終的に受託をお断りさせていただきました。

僕は依頼されたからといってすべてのお仕事を引き受けるわけではありません。

その理由に、金銭的なギャップがある場合はもちろんあります。

先方が許容できる予算と、僕がそのお仕事するに最低いただきたいと報酬の差が埋まらないときです。

僕も仕事を続けていくために、必要な収入を得なければなりません。

では、お金の話さえ折り合えば僕は仕事を受けるのか。

そんなこともありません。

この点、お金さえ出せば、当然仕事は受けるものだと勘違いされている方がごくまれにいらっしゃいます。

こういう方は、自動販売機やコンビニでの買い物が、人と人とのやり取りの基本形になってしまっているのかもしれませんね。

僕は特にフィーリングを大切にしています。

気持ちよく仕事ができそうか。

この会社やこの社長さんのために頑張りたいと感じるか。

仕事の受託の可否を判断するに、大切なポイントとなります。

また、わざわざやった仕事が無駄になりそうなケースも避けます。

お金をもらえれば後のことはどうでもいいというスタンスで仕事ができません。

それ以外にも、抱えている仕事量やなんらかの利害関係などでお断りさせていただくことがあります。

力を出すことをもったいぶっているわけでもなければ、高飛車な態度を取りたいわけではありません。

責任を引き受ける憂いがなくなり、心底貢献したいと思えないと結局良い仕事ができないからです。

会社の命運や社長さんの人生に大きくかかわる役割なのだから、当然軽々しく仕事を引き受けるわけにはいきません。

前置きが長くなりましたが、今回のお仕事はお断りさせていただきました。

「是非お願いします」と社長さんに頭を下げてもらったのですが・・・どうも気が乗りません。

予算が足りないという理由だったわけでもありません。

なんだかわからないけれど、なぜか前向きになれませんでした。

仕事は断らせていただきたいと意思表示をしつつ、その後も違和感をひきずりながら社長さんと話をつづけていました。

あくまで、お役に立てるならば仕事を受けたいわけで、「よしやるぞ」と思えるきかっけを探していたのかもしれません。

逆の見方をすると、断るための決定的な何かを探していたとも言えるのでしょう。

空港のラウンジでそんなやり取りを続けながら、はっと気が付きました。

社長さんが僕に依頼したいことより、この会社には先に実現しておくべきことがあると思ったのです。

状況を再度整理したら、その成果を実現しないまま僕がお仕事を引き受けたところで、その仕事の意味がなくなってしまう可能性があることがわかりました。

そして、僕の肌感覚では、このまま進めばそんな失敗に終わる気がしてなりません。

未来の失敗に対して、僕の感覚はシグナルを発していたのでしょう。

こういうのはロジックではなく、本当に勘としか言いようがありません。

ただ、これまでの経験値の蓄積でできた僕のセンサーは、案外、理屈よりも優れている場合が多々あるように思います。

幸いにも社長さんは僕の判断を理解してくださいました。

「奥村さんがやらないほうが良いと考えるなら、それが正解なんでしょう」と。

そのあと、先に手を付けるべき経営改善の課題について、取り組みのアイデアをいろいろ出させていただきました。

その時の気持ちよくアイデアが飛び出す軽やかさからしても「やっぱりこちらで間違ってなかった」と実感した次第です。

僕にとっては事業承継のコンサルティングのお仕事を逃したかたちなのかもしれません。

でも会社にとっては、僕がコンサルティングで会社に入らないほうが良かったということでしょう。

やらないことが、本当は良いこと。

こんなケースだってありますね。

〜お知らせ〜
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この記事を書いた人

奥村 聡(おくむら さとし)
事業承継デザイナー
これまで関わった会社は1000社以上。廃業、承継、売却・・・と、中小企業の社長に「おわらせ方」を指導してきました。NHKスペシャル大廃業時代で「会社のおくりびと」として取り上げられた神戸に住むコンサルタントです。
最新著書『社長、会社を継がせますか?廃業しますか?』
ゴールを見すえる社長のための会【着地戦略会】主宰

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