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事業を分社して商社に売却=資金調達。

中国地方のある会社のプロジェクトが終わりました。
歴史もあり、地域では名の通った会社でした。

A事業とB事業の二つの事業をやっていて、
前者は赤字、後者は黒字という状況。
A事業のほうがスタッフは多く、
看板の事業なので切り捨てて
撤退すれば良いというわけにはいきません。

 

当時の社長はB事業を立ち上げた弟さんです。
A事業を仕切っていたお兄さんが会社を去ったため、
社長に就任しました。
しかし、A事業のことは分からず、
A事業の幹部などは弟さんの意見を聞きません。
そんな状況なのでA事業の業績は悪くなる一方で、
「もう私には無理です」と・・・
それぞれの事業を別の会社に分けたいとのことで
奥村に声がかかりました。

 

お兄さんが会社にもどってきてくれることになり、
僕のほうで分社の絵を描きながら、
各関係者の調整をしていきました。

最終的には、
B事業を別会社に切り分け、
その事業に興味を持っている商社に
会社を買ってもらうことで
A社の財務改善を図るプラン
となりました。

兄弟や銀行、
商社と関係者全員に貢献する落としどころを
作れたと思っています。

 

プロジェクトを進めながら、何度も
「本当に、奥村先生の言ったとおりになりますね!」
と驚きと感心の言葉を社長からいただきました。

「会社を分けるなんてまず難しいだろう」とか、
「事業を売るなんて銀行が認めない」とか。
当初はそんな疑問を持たれていた様子です。

しかし、当初に描いたとおりにプロジェクトが進んでいきます。
もちろんときに難しい場面もありましたが。

 

極めつけで、こんなこともありました。

切り出した新会社の売買交渉をしているときに、
社長(弟さん)に気を使ってか、急に商社が
「買収の条件に社長(弟さん)の連帯保証も
外すことを加えること」
と要求してきました。

それまで一切出てこなかった話です。
弟さんとしては、
もしそれが実現すればありがたいことで
「この条件をこちらからも銀行に要求していいですよね?」
と乗り気です。

 

しかし、僕は断固拒否しました。
社長は不服そうでしたが、
「その条件を取り下げさせなければこの仕事から降ります」
とまで言い切ってやめさせました。

社長が商社に同調したら、銀行は
「商社と裏工作をして、よからぬことを企んでいる」
といった印象を抱くと感じたからです。
もしそうなればそれまでの信頼関係が崩壊し、
事業の売却が失敗に終わる可能性もあります。

社長には
「私の連帯保証の件は、
商社が勝手に言い出したことで、
私はそんなお願いをしようとは一切思っていません」
と銀行に言ってもらいました。

 

そして後日。
商社との売買が終わる手前のときに、
社長は銀行担当者との雑談の中で聞いたそうです。

「あのとき社長が連帯保証を外す件を要求をしてきたら、
銀行内部では今回の話は潰すことにしていました」と。

社長が僕の意見を聞いてくれたおかげで、
会社は数千万のお金を手にすることができました。
「あのとき奥村先生の言うことを
聞いて本当に良かったです。
普段温厚な先生が、
あのときは珍しく怒って言われましたから(笑)」
と社長談。
いろいろありましたが、
本当に上手くいって良かったです。

 

お兄さんが帰ってきて、
事業的にとても貴重な現金を手にできた旧会社も、
商社に引き取られて子会社となった弟さんの新会社にも、
良いかたちで再スタートを作ることができました。
あとは、事業の成功を祈るばかりです。

 

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この記事を書いた人

奥村 聡(おくむら さとし)
事業承継デザイナー
これまで関わった会社は1000社以上。廃業、承継、売却・・・と、中小企業の社長に「おわらせ方」を指導してきました。NHKスペシャル大廃業時代で「会社のおくりびと」として取り上げられた神戸に住むコンサルタントです。
最新著書『社長、会社を継がせますか?廃業しますか?』
ゴールを見すえる社長のための会【着地戦略会】主宰

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