奥村聡(事業承継デザイナー)
NHKスペシャルで「会社のおくりびと」として取り上げられた奥村聡が現場で培った経験を元に話します

社長が急死してしまったときに注意しなければいけないこと

 

これまで何度か社長が急逝してしまった会社の支援をしてきました。

また、社長がお亡くなりになった後の対応を誤ったため、苦しい思いをすることになった例も見てきました。

その経験から、中小零細企業の社長が急に亡くなったときに、気に留めておいていただきたいことをまとめてみます。

 

お金の支払いを止めない

小さな会社となればなるほど、社長の役割が大きくなります。

役割分担がなされておらず、社長が一人欠けただけで業務が麻痺してしまうケースだってあります。

社長の急死の際、まず一番大切なことは、社長不在のあおりをうけて事業まで殺さないことです。

 

ある近畿の会社では、社長が経理のすべてを行っていました。

他の社員は数字も知らなければ、ネットバンキングのパスワードも知らされていません。

社長が急逝したときには、仕入れ先への支払いすらできない状況に陥ってしまったのです。

本来ならば生前のうちに何らかの対策を施しておくべきことですが・・・

とにかく支払いを待ってもらうお願いをしたり、お金をかき集めたりしながら急場をしのぎました。

 

なお、こんなときは事業を回すのに不可欠な相手から優先してお金を払うべきです。

その方針からすると、①仕入先、②従業員給与、③家賃、④銀行、⑤税金・社保
といった優先順位になるのでしょう。

まずは、会社の血液たるお金の流れを止めてしまうことで、会社が死んでしまうのを防がなければなりません。

 

事業の権利を確保する

また別の会社では、社長が亡くなったことで、会社の株式が妻や子供たちの相続人に承継されました。

妻子は亡社長の会社経営にはタッチしていません。

そして、相続が起きるとすぐに株主の権利を行使して、会社を解散させてしまいました。

幹部だった人から後から聞いた話では、会社の解散は寝耳に水だったそうです。

事業にはしっかりとした収益基盤があり、今後も利益を出せる見込みもあったとのことです。

もったいないことです。

 

株式を持っていれば会社の意思決定ができます。

他人が株式を持てば、こんな結末になってしまうことだってありえるです。

事業を生かしたいと思う社員の方などがいらっしゃるのならば、すぐに動いて事業の継ぎ手として名乗り出なければなりません。

また、従業員の中には継ぎ手になる人がいなくても、他社に引き継いでもらうことだって考えられます。

事業を生き残らせるためならば、第三者だって上手に使ってしかるべきでしょう。

 

後継者は個人保証の承継を留保せよ

社長が急死した会社に後継者がいるとします。

普通の流れでは、亡社長に代わって代表者に就任し、登記をすることになります。

 

本音を言えば社長への就任も一歩立ち止まってもらいたいところです。

しかし、社長が不在となると様々なことが滞ってしまうので、早急に登記までするのは仕方がないかもしれません。

ただ、個人保証については、銀行に言われるがまま承諾してはいけません。

 

社長が代わればすぐに銀行がやってきて、個人保証の引き継ぎに関する書類に押印を求めてくるでしょう。

これを押してしまえば、会社の借金を個人としても背負うことになってしまいます。

本当に大丈夫なのでしょうか。

 

会社の財務内容をよくわかっていない後継者が、前社長の死亡をきかっけに、個人保証をしてしまった案件もありました。

すでにその時点で会社の業績や財務内容はかなり痛んでいたため、後継者が社長に就任した数カ月後には破たんしました。

後継者は個人でも責任を負わなくてはいけない状況になっていたため、破産をし、自宅を失うことになりました。

 

個人保証をする前に、会社の状況を見極めるべきです。

そして、そのまま会社の連帯保証人になるのが得策ではないと思うならば、何らかの策を講じなければいけません。

どんなやりかたがあるのかは長くなるので省略しますが、大切なことは、場の空気に流されて個人保証までしないこと。

銀行のプレッシャーに負けてしまわないこと、です。

立ち止まる勇気をもってください。

 

社長の相続は慎重にすべし

最後は、配偶者やお子さんなどの相続権をもつ方へのアドバイスです。

本当に相続しても大丈夫なのか、を確認をしてください。

「家族が亡くなったから相続するのは当たり前」ぐらいの感覚の方が多くて、見ていてひやひやしてしまうことがあります。

 

一度相続すれば、その死者のすべてを相続します。

資産ばかりだったらいいのですが、負債や損害賠償などのマイナスだって引き継ぐことになるのです。

美味しいとこどりはできません。

まず相続することになる内容を吟味したほうがいいのは間違いありません。

 

相続することになるマイナスは、借金だけではありません。

連帯保証もその対象です。

小さな会社の社長ならば、会社の借金を個人保証しているのはあたりまえです。

注意しておきたいところです。

たとえば、亡くなった社長の相続財産の中身を検討したら、資産の方が多いかもしれません。

ここだけを見れば相続しても安全そうです。

しかし、裏には個人保証があったりするのです。

もし会社が破たんすれば、払うことができなくなった借金は、連帯保証人に請求されます。

亡き社長がしていた個人保証は、相続人であるあなたにまわってくるかもしれないのです。

私のクライアントでも、印刷会社を経営していた父を相続してしまったため、数年後、妻と娘たちが破産する羽目になったケースがあります。

娘たちは会社の経営には全く関与していなかったのに、個人保証の責任を取らされてしまったのです。

うかつに相続することに危機感をもっていただきたいところです。

ときに相続放棄も

場合によっては相続放棄をしたほうがベターなケースだってあるはずです。

なお相続放棄については3点注意していただきたいことがあります。

 

まず、相続を放棄したければ、家庭裁判所の手続きが必要だということです。

自分で放棄したつもりでも、それだけでは足りません。

 

2点目は、相続放棄ができる期限が定められているということです。

自分が相続人だと知ってから3カ月以内となっています。

 

そして最後は、相続人のようにふるまうと本当に相続人になってしまうという点です。

たとえば、遺産分割協議に参加して協議書に押印する行為は、相続人だからできることです。

当人がそのような行動をとるのは「自分が相続人だと認めたから」ということにされてしまいます。

後になって「やっぱり相続放棄をしたい」となっても、もう手遅れになってしまいます。

 

死亡保険金を受け取る

生前に前社長が生命保険をかけていて、受取人が会社になっていたならば、それはすぐに受け取りましょう。

緊急時においては現金を確保しておくことが鉄則です。

ただし、そのためには役員変更の登記をしなければいけない場合が多いかもしれません。

登記簿上、前社長が代表取締役のままでは死亡保険金を払ってくれないことになっている生命保険会社があるためです。

こんなケースでは、急いで役員変更登記をしましょう。

参考「代表取締役(社長)の死亡に関する登記手続きは?」

 

なお、
「社長になったら会社の借金をすべて背負わなければならなくなる」

「(自分が相続権のある親族のとき)相続放棄ができなくなる」
と心配な方がいらっしゃるかもしれません。

しかし、この一事だけでそうなることはありません。

 

社長死亡時の相談について

社長が亡くなってしまったならば、とにかく「すぐに」ご相談いただきたいところです。

「悲しみに暮れているときにそんな不謹慎なことは・・・」と、思われるかもしれません。

しかし、会社の劣化スピードはあまりに速く、早期に手を打たないことで一気に倒産まで進んでしまうことがあります。

また相続のように、一度してしまったらもう後戻りできないこともあります。

人生を左右する重大事であり、ミスをしてしまったら「知らなかった」では済まされません。

こんな状況のシビアさに対し、関係者の意識が低かったり、のんびりしているケースがあまりに多いことに苦い思いをしています。

 

ご相談の申込やお問合せは、こちらのフォームから可能です。

 

社長の死亡リスクに備える!

もちろん、起きてしまう前に対策をしておくことがベストです。

相続が発生した後では、危険は高まり、選択肢も限られてしまいます。

ことの重大性を思えば、投資しておくべき準備でしょう。

関心をお持ちいただいた方、ぜひリンク先もお読みください。

【オススメです!】
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プロフィール

奥村 聡(おくむら さとし)
事業承継デザイナー
これまで関わった会社は850社以上。廃業、承継、売却・・・と、中小企業の社長に「おわらせ方」を指導してきました。NHKスペシャル大廃業時代で「会社のおくりびと」として取り上げられたコンサルタントです。
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